税理士事務所がSNSを活用する目的は、新しいお客様を集めることだけではありません。
誰に見てもらいたいかによって、SNSの役割も発信する内容も変わります。
今回は実際に調査した税理士事務所の中から、4つの活用実例を紹介します。
活用法① 得意分野の情報を発信して、新しい仕事の依頼につなげる
SNSでは、税務に関する情報だけでなく、自分が得意とする仕事や実際の取り組みを発信することで、新しい仕事の依頼につなげることもできます。
その一例が、畠山謙人税理士事務所です。
代表の畠山氏は、AIを使った税理士業務の効率化などについて、自身の実務経験をもとにXで発信しています。
初めての本を出すにあたって、noteに今の気持ちを書きました。 3月の記事は、出すかどうか1週間悩みました。 結果は360万表示。 でもうれしさより先に来たのは、セミナーで1,000人以上と話して見えた、業界の課題でした。 そこから、僕の発信は「顧問を取るため」から「税理士業界を前に進めるため」に変わりました。 一度は流れた出版企画のこと。 全部Claude Codeで書いたこと。 読んだら最初の1週間でやってほしいこと。 全部書きました。 https://t.co/L1f7T1pFyY
— 畠山謙人│AI税理士 / 自走するバックオフィス (@kandmybike) October 19, 2026
2026年7月に公開された本人の記事によると、Xでの発信が広く拡散され、累計100件を超える問い合わせがあったそうです。
また、仕事の内容も税務顧問だけでなく、AI導入支援、講座、出版などへ広がっています。
なお、100件以上という数字は問い合わせ件数であり、契約件数ではありません。
また、以前から発信を続けており、突然成果が出たわけでもありません。
この事例で注目したいのは、実際の仕事で培った知識や経験を発信することで、その分野に関心がある人から仕事の依頼が来る可能性があるという点です。
例えば、会社設立を得意とする税理士なら、実際によく受ける質問や手続きで注意すべきことなどを発信する方法が考えられます。
読んだ人が「この税理士は会社設立に詳しそうだ」と感じれば、相談先の候補になるかもしれません。
ただ税金の知識を発信するだけでなく、自分の得意分野や実務経験を知ってもらうことが、新しい仕事につながる可能性があります。
活用法② 顔や話し方を見せて、相談前の不安を減らす
税理士を探しているお客様は、専門知識や料金だけでなく、実際にどのような人が対応してくれるのかも気になります。
そこで役立つのが、SNSで税理士本人の顔や話し方、事務所の雰囲気などを見せる方法です。
たじり税務会計事務所|動画で顔や話し方を伝える
たじり税務会計事務所では、代表の田尻氏がInstagramで税務に関する短い動画を発信しています。
SNS運用支援会社のインタビューで田尻氏は、初回面談の際に、お客様から普段Instagramを見ていると声をかけられることがあると話しています。
事前に顔や話し方を知ってもらえているため、初めての面談でも堅苦しい雰囲気になりにくいと感じているそうです。
また、Google検索からホームページを訪れ、その後Instagramで人物像を確認して問い合わせる流れができているとも説明しています。
つまり、SNSは新しいお客様を直接集めるだけでなく、すでに事務所を知っている人が、相談するかどうかを決めるための判断材料にもなっています。
参考:田尻氏のインタビュー
税理士法人SuMIzei|事務所の雰囲気やスタッフの様子を伝える
同じような目的が明確に示されているのが、税理士法人SuMIzeiです。
公式ホームページの会社案内では、Instagramを通じて事務所の雰囲気、社員の顔、勉強会、経営者向けの情報などを公開していると案内しています。
ホームページだけでは伝えきれない事務所の様子を見せ、お客様が依頼先を選ぶ際の判断材料にしてもらう考えです。
初めて相談する人にとって、担当する人の顔や職場の雰囲気が分かることは、安心して問い合わせるための材料になります。
活用法③ 採用希望者に職場の雰囲気を伝える
SNSを見るのは、お客様だけではありません。就職や転職を考えている人も、応募先の情報を調べています。
税理士法人アップパートナーズでは、中途採用向けのInstagramアカウントを開設しています。
公式採用サイトでは、会社の雰囲気や社員の人柄、詳しい業務内容などを伝えるために開設したと説明しています。
採用希望者が知りたいのは、事務所の専門性だけではありません。
どのような人と一緒に働くのか、職場はどんな雰囲気なのか、自分に合いそうな環境なのかも気になるはずです。
求人票に給与や勤務時間が書かれていても、実際の職場の様子までは分からないことがあります。
そこで、スタッフの働く姿や職場の日常をSNSで見せれば、応募する前に自分が働く姿を想像しやすくなります。
採用への具体的な効果は確認できていませんが、SNSをお客様ではなく採用希望者に向けて活用している事例です。
活用法④ 同業者や他の専門家とのつながりを作る
SNSは、お客様や採用希望者だけでなく、同じ業界で働く人との交流にも利用できます。
SAKIDORI税理士事務所の代表、北原氏は、独立初期に取り組むことを絞り、ホームページ制作、事務所名、Xの3つを優先しました。
2026年2月に公開された独立開業の事例紹介によると、Xは税理士や会計士同士の情報交換、関係づくりを目的として選んだそうです。
一方で、InstagramやYouTubeなどには最初から手を広げないと判断しています。
税理士の仕事では、実務で分からないことを相談したり、専門分野の異なる税理士と情報交換したりする機会も大切です。
さらに、税理士や会計士だけでなく、弁護士や行政書士など、仕事で連携できる専門家との関係づくりにもSNSを活用する方法が考えられます。
例えば、顧問先から税務以外の相談を受けた際に、対応できる専門家を知っていれば、適切な相談先を案内しやすくなります。
この事例では、Xによってどれだけ仕事が増えたかまでは確認できません。
ただ、SNSを直接の集客手段としてではなく、情報交換や仕事上の協力関係を作るために活用するという考え方は参考になります。
SNSを始める前に、誰に何を伝えるかを決める
ここまで紹介した事例のように、SNSは目的によって使い方が大きく変わります。
そのため、SNSを始める前に、次の4つを考えることが大切です。
- 誰に見てもらいたいのか?
- その人は何を知りたいのか?
- SNSを見て、どう感じてもらいたいのか?
- その後、どのような行動を取ってもらいたいのか?
例えば、相談前に人柄を知ってもらうことが目的なら、税理士本人の話し方や実際の仕事の様子を見せる方法が考えられます。
一方、採用が目的なら、スタッフの紹介や職場環境、日々の仕事の様子などが役立ちます。
同じInstagramを使う場合でも、相手が違えば伝えるべき内容は変わります。
すべての事務所が4つの目的を同時に追う必要はありません。
まずは自分の事務所がSNSを通じて何を実現したいのかを決め、それに合った情報を発信することが大切です。
集客導線研究所では、ホームページやGoogleマップ、ブログ、SNSなどを初めてのお客様の視点で確認し、問い合わせまでの流れを診断しています。
まとめ
SNSは、新しいお客様を集めることだけが目的ではありません。
大切なのは、誰に何を伝え、その後どのような行動につなげたいのかを明確にすることです。
SNSを始めること自体を目的にせず、自分の事務所に必要な役割を考えて活用しましょう。

